84’HALMENS DELUXE(ハルメンズ)

私はアルバムをトータルなものとして聴いているので、寄せ集めの印象があるベスト盤は好きではありません。しかしこのアルバムはむしろオリジナル盤よりも良くできたべスト盤なのでお気に入りです。オリジナルは「近代体操(80)」と「20世紀(81)」の2枚ですが、それぞれがやや散漫な印象をうけるアルバムです。このアルバムではそうした散漫さが全くなく、「現代の若者・社会」への批判精神に貫かれたコンセプトアルバムとして受け止められます。

曲順もよく練られていて、一曲一曲が短いこともありますが、一気に聴かせてくれます。また「昆虫群」,「マスクト・パーティー」はリミックスされていますが、私としては珍しくリミックス版のほうが好きです。名曲「ボ・ク・ラ パノラマ」はゲルニカの「新世紀への運河」に「パノラマアワー」と改名したオーケストラバージョンがありますが、これもハルメンズのほうが好きです。上野耕路の奇妙なフレーズを一所懸命になってギターでコピーしたものです。今では弾けませんが…(T T)

このレコードは友人に譲ったのか、それとも貸したままなのか、とにかく手元になかったので改めてもう一枚LPを中古で買い求めました。ところがこのレコードはスクラッチノイズが酷くてとてもがっかりした思い出があります。このLPも、CDを購入したのを機に結局知人に譲ってしまいました。

89’ LETTER FROM HOME (PAT METHENY GROUP)

80年のことです。陶器の「たち吉」のCMに、パット・メセニーがイメージキャラクターとして登場しました。そのときの爽やかなBGMの印象でパット・メセニーに対して「軽佻浮薄なフュージョンギタリストにちがいない」と見当外れも甚だしい偏見を持ってしまい、聴くチャンスを避けるように逃していました。

その偏見が瓦解したのが、この「LETTER FROM HOME」との偶然の出会いでした。

1曲目の「HAVE YOU HEARD」一発でノックダウン。気持ちの良い世界に身をゆだね、あっという間に終曲「LETTER FROM HOME」になってしまうのでした。一時期、日曜日の午前中には必ず聴いていました(逆に言えば、日曜日の至福のために、平日は聴かないように我慢していました)。やはりあっというまにほぼコンプリートしてしまい、今では一丁前のパットファンを気取っています。

紋別市に住んでいた頃、パットのシグニチュアーモデルで高価なギター(IbanezのPM100NT)が北見市の楽器店に吊り下げられていたのを羨望のまなざしで眺めていました。ところが札幌市に転居後、色違いの PM100BK をオークションで安価で入手してしまいました。弾くのがもったいなくて普段は押し入れに突っ込み、偶に出しては「HAVE YOU HEARD」のさわりの部分を爪弾いていましたが、このまま楽器を埋もれさせてはいけないと思い直してオークションで放出しました。猫や豚には小判や真珠を与えてはいけない。

87’ Mint Electric (PSY・S)

Fairlight III を駆使するサウンドクリエーターの松浦雅也と、伸びやかなボーカルのチャカとのサウンドユニットの3作目です。完成度では次作の「NON-FICTION」の方が上だとは思いますが、タイトルに「MINT」がつくように、このアルバムのほうがフレッシュな感覚がいっぱいで私は好きです。窪田晴男、鈴木賢司、いまみちともたかの奏でる個性的なギターが、打ち込んだリズムの上を強烈にドライブしています。サエキけんぞうの作詞も「Simulation」をはじめとして冴えてたものばかりです。

この頃の鈴木賢司は私のお気に入りで、「Elctric・Guitar」の「SPARKS!!」をオープンリールデッキ(!)に録音し、スピードを落としてコピーに励んだものでした。結局弾けませんでしたが…(こればっかり)。彼がDJを務めた「Club Ele-King」も欠かさず聞いていました。

89.1.9、中野サンプラザで行なわれたPSY.Sのコンサートに行きました。世は「平成元年」になったばかりでしたが、松浦雅也が「元号が変わったことを何も実感できない者は哀れだ」といった主旨の発言がとてもカッコよかったと記憶しています。ちなみにこの頃から新譜はLPで発売されなくなったので、CDを購入するようになりました。

86’couples(pizzicato five)

松本隆の詩が「物語」ならば、小西康陽の詩は「小説」。なにげない日常を切り取った世界。恋の透明感と繊細さと儚さが見事なまでに表現されています。曲も時折バカラック的なフレーズがさり気なく出てきて、にやりとさせるところがまたイイ。

ピチカトーンなるテクノを期待して、前評判なしに池袋の西武で予約して買いました。針を落とすとアコースティックな素敵な「裏切り」。それ以来ピチカートマニアになってしまいました(田島時代に池袋のWAVEで行なわれたギグにも行きました。つい人目を憚らず「小西踊り」をしてきました)。基本的には佐々木麻美子と高浪慶太郎(この頃は敬太郎ではなかった)とのツインボーカルなのですが、囁くような佐々木の歌声に、そっと優しく慶太郎が支えるようなユニゾンで歌われます。それがまた「恋」のはかなさと優しさとを表現しているように思えます。

87.12.16、インクステック芝浦で行なわれたライブのチケットの半券はいまでも大切に保管しています(【註】2018年にLPを売却した時に、おまけにしてしまいました。おかげさまで結構なお値段で引き取られました)。

よく「無人島に持っていく1枚」というお題がありますが、私は悩むことなくこの「couples」で決まりです。95年にはインストバージョンも発売されました。ストリングアレンジが切なさでいっぱいです。

86’ おしゃれテレビ

大学時代にニューウェーブしていた友人(彼は結局中退してしまいましたが…)の家で、カセットの販促テープ(デモテープ?)で始めて聞きました。とんでもない衝撃が走り抜け、帰りに池袋のレコードショップを早速回りましたが、全然売っていません。その後時間をかけて都内のレコード店を虱潰しに探し、どうにか入手することができました。アナクロな上野耕路とは違う、洗練されたクラシックセンスあふれた野見祐二のシンセサイザーポップスとでもいうのでしょうか。適切な説明が実に難儀ですが、テクノポップとエレガンスとの幸福なる邂逅です。

「踊るクエン酸回路」が白眉の出来です。食物が酸化されるまでの過程を組曲にした歌で、高校生の時に知っていたら生物のテストでさぞかし有利だっただろうなぁと思います。

六本木で1回だけ生のステージを見ました。周りは(会話の内容から推測すると)音大関係者ばかりで「場違いな所へ来てしまった」と身を縮ませながら、アコースティックな(!)ステージを堪能しました。いつCDになるかを待ち望み、レコードショップでかならず「ア行」を確認していましたが、99年にめでたくCD化されました。が、ミュージシャン名は「V.A」。小さく坂本龍一、EPO、鈴木さえ子、他とありました。あんまりです。野見祐二はその後「子猫物語」やアニメの音楽担当といった仕事がメインになっているようで、リーダーアルバムは作らないようです。残念です。

82 ’改造への躍動(ゲルニカ)

このアルバムは冨田勲とは逆の意味でシンセサイザーの可能性を切り開いたと思います。アナログシンセサイザーの分厚い音での近代クラシックの疑似オーケストレイションに、戸川純のオペレッタボイスの組み合わせが最高です。セカンド、サードアルバムは実際のオーケストラとの組み合わせでしたが、残念ながらこの妙味は出せませんでした。CDにはボーナストラックで、リアルなオーケストラ演奏による「銀輪は歌う」,「マロニエ読本」が収録されていますが、やはり唐突な感じが否めません。

また太田螢一による昭和初期的世界がこのサウンドを力強く支えています。カクカクした動きをするモノクロフィルムの人々を想起させる一連の歌詞。彼なくしてこの「ゲルニカ」の世界観は完成できません。

上野耕路の実家の美容学校で4トラックカセットのMTRでの多重録音というところも凄い。プロデューサーの細野晴臣の発案で音質をわざと下げたという話を聞いたことがありますが、本当ならば正解ですね(ちなみに野宮真貴「ピンクの心」収録の「原爆ロック」で音質を下げていない上野耕路の「ゲルニカ的世界」が確認できます)。

現在においてもこのアルバムを超えるテクノ、ニューウェーブ作品はないと思います。

81’DANZON (松岡直也&WESING)

今まで培ってきたサルサ+ロックギターのWESINGの世界に新たにポップスが加わった、(新生?)WESINGの集大成(?)ともいえるアルバムです。WESINGとしては、最後のスタジオ録音作品になりました。

大空はるみ(TANTAN)のボーカルがとにかく素晴らしい。聞いていて気持ちがよくなる歌唱力を持った彼女以上のボーカリストを私は知りません。彼女のレコードは入手が難しく、その昔、オークションで「はるみのムーンライトセレナーデ」の美品LPを2万円(!)で落札したことがあります。落札をした喜びもつかの間、その後すぐにもう一枚出品されて数日後安価で落札と、なんだか悔しい思いをしましたが、オークションはまさに「運」。しかたがありません(その後、長い長い時間が経ってから、タワーレコード限定で復刻されました。もちろん揃えました)。

プリズムから出張している和田アキラは、このアルバムでも超音速でギターを咽び泣かせていますが、いつもより若干控えめです。リーダーの松岡直也のピアノもわりと控えめ。そのかわりバンドとしてのアルバムの完成度が高くなっています。このアルバムが素地になったのでしょうか、松岡直也+和田アキラ+ボーカルの組み合わせは、'85に中森明菜「ミ・アモーレ」に結実します。

81 ’SPIRITS(森園勝敏 with BIRS'S EYE VIEW)

高校への通学途中にあるレコード店で予約をして買いました。当時、私が在籍していたクラスで音楽の話題に上っていたのはTOTOと柏原芳恵であり、「森園勝敏?四人囃子?」といった状況でした。

実は私も四人囃子も森園勝敏のリーダーアルバムも聴いたことがなく、雑誌の惹句も相まって「壮大な音楽世界が展開されるに違いない」と期待していました。しかし針を落とすと軽快なロック、フュージョン、カリンバが響くアフリカンな曲だったりとバラエティに富んだサウンドが飛び出してきました。スーパーテクニックがこれでもかと披露されるわけでも、プログレッシブな展開をするわけでもありませんでした。予想は外れたわけですが、かえってそれがよかった。この軽い感じがとても心地よくて、結果ターンテーブルに何度も載せることになりました。その後それまでのアルバムを買い揃えるのですが、このアルバムが一番好みでした。

私は耳コピーで和音を聞き取ることができませんが、スマートフォンのアプリのおかげで「Nothing Could Ever Change Your Mind」のコードが判明し、ヘタクソながらに合わせて弾いたりしています。好きな曲をギターで弾くことはとても楽しい。

50'お気に入りディスク

70年代後半から80年代前半にかけて、フュージョン(個人的にはクロスオーバーの響きの方が好きです)の名盤が続々とリリースされました。またYMO旋風が吹きまくり、子どもから大人まで家族揃ってみんなでYMOを聴いたものです。その後、テクノ第2世代やニューウェイブも注目されはじめ、数々の名盤が生まれました。佐野元春や渡辺美里、尾崎豊、BOOWYといったミュージシャンやバンドが台頭したのもこの時期です。私は「坂本龍一のサウンドストリート」を一生懸命に聞いていたくちなので、必然的にそっち系統の音楽ばかり聴いていました。大学時代は「普通」の友人と音楽の話が合わなくて困ったものです(そのときの後遺症で、職場での音楽談話に今でも入れません(T T)<困ったものです)

81’Coconuts High(小林泉美)

フライング・ミミ・バンドのセカンドアルバムから輝いていたブラックなフィーリングが、このファーストソロアルバムで弾けています。それと引き替えなのか、それまでの若干甘めのサウンドが払拭されています。セカンドアルバムのジャケットの背景が黒いのも、サウンドが夏っぽい爽やかなものからファンクなものに変化したために、企画していたビーチの写真から差し替えたとの話がありますが頷けます。1曲目のセルフカバー「PALM ST.」こそ軽やか(いや、オルガンソロはかなり重厚)ですが、2曲目以降は熱くてヘビィなサウンドです。

「PALM ST.」では高中正義が客演しますが、鳥山雄司のアルバムでの客演同様、自分のアルバムでは披露しないなかなかに切れっぷりのよいギターソロです。ギターソロだけなら高中の「T-WAVE」のほうが佳い出来ですが、全体的には甲乙付け難い。

小林泉美はフライング・ミミ・バンドを含めて、何故か長いことCD化されませんでした。仕方がないのでLPをCD化してくれるサービスを利用して私家版CDを作ろうかと一時期は真剣に考えましたが、12年にタワーレコード限定でCD化されたので無事解決しました。音楽活動を再開したようなので新作も期待していますが、彼女のもう一つの重要な世界 − アニメワークスをコンピレーションしたアルバムをどこかで作って欲しいですね。私は「ラムのラブソング」だけは持っています。

82 ’awakening(佐藤博)

佐藤博の名前を知ったのは、高中正義のアルバムでのクレジットでした。細野晴臣がYMOを結成するときに初代メンバーに考えていたとの記事で、どんな音楽なのか聞いてみようと「Time」を購入しました。鈴木茂の「BAND WAGON」と細野晴臣の「泰安洋行」のいいとこ取りのサウンドにすぐさま魅了され、速攻で「awakening」も追加注文しました。そして今までに聞いたことがない、デジタルとアナログとが融合した佐藤博の気持ちのよいサウンドにすっかりと耽溺してしまうのでした。

それからというもの、Amazonやオークションに出品されているCDやLPをバシバシと注文・落札し、タワーレコード限定で復刻されるCDも漏れなく買い揃え、あっという間にほぼコンプリートしてしまいました(このときに安く入手したLPが、後年オークションで高く売れるというオマケもありました)。

「awakening」と「Time」そして「THIS BOY」の3枚が現在もヘビーローティションです。BGMとしても真剣に向き合っても、気持ちのよい時間を約束してくれるアルバムです。音楽活動40周年記念アルバムが出るだろうと勝手に心待ちしていたら、突然の訃報。大きな喪失感を味わいました。